2008年05月14日

札幌の精神科病床数-世界一

 平成20年5月12日北海道新聞朝刊に掲載された記事です。
 論説委員室から
 風
 上村英生(かみむらひでき)
 精神科病床を減らそう
      ■         ■
 札幌の精神科の病床数は日本一、と聞いた時は信じられなかった。
 7,200床あり、市町村(東京は特別区)別では全国一になる。
 人口一万人当たり38。
 世界保健機関によると、世界全体では人口一万人につき1.5だ。
 「日本が世界一だから、札幌は世界一多いまち」と言われる。
      ■         ■
 札幌の精神科は民間病院が大半を占め、
 公立を合わせて35病院に上る。
 病院の開設は許可制である。
 病床数は医療法に基づく地域医療計画で規制されているが、
 権限は都道府県にあり、札幌市にはない。
      ■         ■
 「全道一区」のため、
 医師や看護師を確保しやすい札幌に民間病院が集中した。
 病院が増えたので全道から患者が集まった。
 その結果、
 患者は住んでいた地域社会から離れざるをえなくなった。
 入院期間が長いため、帰る家や家族をなくし、
 札幌で入退院を繰り返しているという。
      ■         ■
 札幌市は4年かけて
 退院可能な400人を社会に帰す目標を揚げた。
 本年度、まず約1,000万円をかける。
 国は、受け入れ条件が整えば退院可能な
 「社会的入院」を、入院者全体の2割とみている。
 札幌にあてはめると、1,400人台になる。
 目標は控えめすぎる。
      ■         ■
 どう進めたらいいか。
 先行例となる札幌の病院2ヵ所を見学した。
 日本の精神科の平均入院期間が300日を超える中、
 昨年度の平均が114日だった民間病院を訪ねた。
 フェンスや鉄格子もなく精神科に見えない。
 代わりに、危険防止を考えて窓ガラスを厚くし、
 全開できないよう工夫していた。
      ■         ■
 ストレス疾患に対応した病棟を見た。
 3ヵ月以内に退院させている。
 部屋はホテル並みで快適そう。
 長期入院患者を退院させるため、
 家族を2年かがりで説得し、
 クループホームに送り出した例もある。
      ■         ■
 病状が悪化すると、
 家族が「病院に入れておきたい」と思うからだ。
 難しいのは地域でその人らしい生活をすることにある。
 楽しみや役割、住民との連携など、
 生活の質を大切にしている。
      ■         ■
 この病院は長期入院者の退院先として
 民間アパートの一室を借り上げ、
 女性2人で暮らす共同住居を18年前に開設した。
 当時は偏見が強く、賃貸契約にも苦労した。
 だが、病院が支え、家主の信頼を得た。
 現在はグループホームを含め
 7ヵ所の住居を運営している。
      ■         ■
 市立病院静療院は、5つあった
 成人・老人病棟院患者を少しずつ減らし、
 すでに3棟を閉鎖した。
 安田素次院長
 「良い薬がどんどんできて、今は3ヵ月ぐらいで退院できる」
 と語る。
 その分、外来患者が膨れあがっている。
      ■         ■
 問題は長期の患者を多く抱えた民間病院だろう。
 病床を減らせば、
 それまでいた看護師らスタッフの人件費が賄えなくなる。
 どう軟着陸させるか。
 もうひとつの課題は、地域の受け皿づくりだ。
 札幌には、受け皿となる地域生活支援センターが5ヵ所ある。
 そのうちの一つでは、
 退院した人や入院患者も来て、
 話をしたり、お茶を飲んだりしていた。
 相談窓口もある。
      ■         ■
 市は各センターに、
 地域と病院の双方に働きかける調整役と
 自立支援員を置くことにしている。
 退院した人たちが、
 社会で生きられる仕組みを充実させたい。
 道内には、十勝管内に全国的な先進例がある。
 入院する必要がない人を
 病院の都合で入院させてはいけない。
 (以上、北海道新聞より引用)

      ■         ■
 私は何回か書いたことがありますが、
 学生時代に精神科医になろうと思った時期がありました。
 『血を見るのが怖かったからです』
 今となっては笑い話ですが、
 当時は本当に血を見るのを想像しただけで、
 背筋がぞっとしたものでした。
      ■         ■
 医療費を含む社会保障費の中で、
 精神科や精神病院の費用がどの程度かは知りません。
 長期入院中の精神科患者さんは…
 大部分が生活保護を受けていらっしゃいます。
 医療費と生活費に税金が使われています。
 うつ病で長期に職場を離れる人も増えています。
 国は、精神疾患に対する根本的な対策をとるべきです。
      ■         ■
 札幌の精神科病床数との因果関係は不明です。
 札幌は同規模の他都市と比較して、
 重大犯罪が少ないと聞いたことがあります。
 北海道新聞の記事に掲載されてはいませんでした。
 精神疾患をどう扱うかで、犯罪率にも影響すると言えます。
 重大な犯罪を犯した犯人の弁護士さんは、
 精神鑑定の結果、責任能力がないと…
 無罪を請求します。
 社会問題の一つとしてもっと政府に取り組んで欲しい課題です。

投稿者 sapporobiyou : 21:33 | コメント (0)

2008年05月13日

美容外科のお客様②

 この日記を書きはじめた頃に、一度書いたことがあります。
 平成18年10月30日の日記です。
 美容外科のお客様は、
 きれいで年齢より若く見える方が多いのが特徴です。
 若くてキレイなら美容外科へ行く必要がない、
 と思われる方がいらっしゃるかもしれませんね。
 生まれつき美人でキレイな方も歳をとります。
 どんなに美人でも、
 手間と暇とお金をかけなければ美しさを保てません。
 女優さんがいくつになってもキレイなのには理由があります。
 努力なさって手間も暇もお金もかけていらっしゃるからです。

      ■         ■
 最初の頃の日記は、この程度でした。
 もう少し付け加えます。
 若くてキレイな方でも、美容外科を受診されます。
 ‘医学の力’を借りて…
 もともとのキレイに磨きをかけます。
 言われなければ、
 どこをどう‘お直し’したか全くわかりません。
      ■         ■
 私たち、形成外科医は事故でケガをなさった方とか…
 生まれつき、口唇とか指とかが…
 他の子どもと、少し違うとかの…
 いわゆる‘病気’の治療を得意とします。
 美容外科は…
 『美しい人をより美しく!』です。
 つまり、スタート時点が違うのです。
 健康で正常な方に‘治療’を施す(ホドコス)のが…
 美容外科です。
      ■         ■
 形成外科は確かに、
 技術的に優れたものを持っています。
 技術力があるので、
 『あなたの目は切った方がよいです』
 と自信を持って言えます。
 ところが…
 たとえ、医療従事者でも
 『切るのが怖い!』
 という方もいらっしゃいます。
      ■         ■
 ここで、形成外科美容外科の違いが出ます。
 形成外科医は、
 『あなたの目は、下垂していて、黒目が隠れています。』
 『埋没法でプチ整形をしても、すぐにとれます。』
 『私は切開する手術をおすすめします。』
 『糸で留める手術はダメですょ』
 美容外科医は、
 『切るのは誰でも怖いものです。』
 『糸で固定する手術は、数年後に元に戻る可能性があります。』
 『ただ、腫れは切る手術より少ないです。』
 『2~3日もあればお仕事にも復帰できます。』
 『まず糸で固定する手術をしましょう。』
      ■         ■
 形成外科医と美容外科医は、
 このくらいの違いがあると、私は考えています。
 私は、まだまだ形成外科医の領域です。
 なかなか美容外科医になり切れません。
 この違いに悩みます。
 さくらんぼさん、わかっていただけますか?

投稿者 sapporobiyou : 23:59 | コメント (0)

2008年05月12日

十仁スピリット

 こんなことを書くと、
 十仁病院の梅澤先生に叱られるかもしれません…
 私が勝手につけた名前です。
 私に美容外科を指導してくださったのは、
 中央クリニック新宿院の日高先生でした。
 日高先生は、東海大学医学部をご卒業後、
 正確に言うと、東海大学在学中から…
 美容外科に興味を持っていらした先生です。
      ■         ■
 日高先生に形成外科の講義をなさったのが、
 昨日、特別講演をしてくださった、
 東海大学形成外科の谷野隆三郎教授でした。
 日高先生は東海大学卒業後に十仁病院へ入職。
 私が形成外科医として経験したのと同じ歳月を、
 美容外科医として活躍された、生粋の美容外科医です。
 日高先生と中央クリニック新宿院で、
 ご一緒に手術をさせていただいた日々は、
 私にとって何物にも代えがたい、
 貴重な財産となりました。
      ■         ■
 2002年(平成14年)春に札幌医大をクビになって、
 毎日落ち込んでいて…
 うつ病になりかけていた私を救ってくれたのが、
 日高先生と中央クリニック新宿院のスタッフでした。
 人生でもっとも辛かった時期でした。
 この時期に、
 日高先生から教えていただいたのが、
 十仁スピリットです。
      ■         ■
 日高先生から教えていただいた…
 美容外科スピリット
 美容外科は‘技術’だけでは食べて行けません。
 ‘お客様のニーズ’に合わせた手術や治療を提供できるのが
 美容外科だと日高先生から教えていただきました。
 私はまだまだ修行が足りません。
 横柄な形成外科医のままです。
 自分の考えに合わない手術はお引き受けしていません。
      ■         ■
 十仁系の日本美容外科学会に出席すると…
 この美容外科スピリットが気になります。
 私は自分の技術を安売りするつもりはありません。
 ただ、自分の技術を押し売りしてはいないか?と反省します。
 つまり、切らない手術を希望される方には…
 たとえ数年後には効果が少なくなる方法でも…
 お客様のニーズに合わせた手術を‘売る’ことができるのが
 真の美容外科医のような気がします。
      ■         ■
 その意味で、梅澤先生や高須先生の率いる、
 日本美容外科学会(十仁系)は、貴重な存在だと思います。
 私たち形成外科医は、技術重視のあまり…
 顧客の要望に耳を貸さない風潮がある?
 ような気がしています。
 美容外科が、大学病院よりも、
 新橋駅前で繁盛したのは…
 お客様に支持された賜物だったと感じています。

投稿者 sapporobiyou : 23:50 | コメント (0)

2008年05月11日

第94回日本美容外科学会

 平成20年5月11日、東京お台場で開催された、 
 第94回日本美容外科学会に参加して来ました。
 今回の学会長は、銀座みゆき通り美容外科の水谷和則先生です。
      ■         ■
 何回か書いていますが、
 日本美容外科学会は、同姓同名の2つの学会があります。
 今回の学会は、十仁学会と呼ばれている学会です。
 今年は、
 今まで参加していなかった形成外科の先生が多数参加していました。
 水谷会長が形成外科の先生に声をかけて、
 有名な先生の教育講演や
 パネルディスカッションを企画して下さったからです。
      ■         ■
 学会を開催するのは、
 大学医局ですら大変なことです。
 開業医が日常診療の合間に、
 企画・交渉をして、準備をするのは、
 肉体的にも精神的にも経済的にも大変です。
 今回の日本美容外科学会は、参加人数も多く、
 韓国や中国からの参加者もありました。
 内容も充実していました。
 水谷和則会長に、心から感謝します。
 本当にご苦労様でした。
      ■         ■
 今回の学会で、
 ノエル銀座クリニックの保志名先生、
 シエル美容クリニックの小田先生など、
 十仁病院OBの先生のご発表をお聞きしました。
 保志名先生が出された、
 十仁病院の古い美容外科のスライドを拝見して、
 改めて十仁学会の歴史を感じました。
      ■         ■
 形成外科美容外科は、どちらかというと技術や理論を重視。
 十仁病院の美容外科は、顧客ニーズを重視。
 お客様が、切る手術がイヤと言えば、
 多少無理でも、できる限り切らずにやるのが、
 十仁スピリットと感じました。
      ■         ■
 発表内容では、
 日本人を外人の顔にしてしまう、
 ヴェリテクリニック銀座院の、 福田慶三先生。
 顔面骨を見事に切って、
 小顔の美人を作る、
 リッツ美容外科東京院の広比利次先生。
 どちらの手術も私はしておりません。
 見事な仕上りでした。
      ■         ■
 高須クリニックの高須克弥先生は、
 糸を使った顔面若返り手術の歴史を、
 ご自身が海外へ行かれて撮影されたビデオ。
 また、高須先生ご自身が、
 海外の学会で金の糸を入れられたビデオなど、
 ふだんわれわれが見ることができない、
 貴重な映像をみせてくださいました。
      ■         ■
 学会に参加して、他の先生の手術を見たり、
 旧知の先生とお話しするのは楽しいことです。
 韓国の先生ともお話ししました。
 最後の講演で、東海大学病院長を務められた、
 谷野隆三郎先生から
 美容外科にとって必要な医療安全と医事法制について、
 ご自身のご経験を踏まえた講義がありました。
 身の引き締まる思いでお聞きしました。
 また、明日から頑張って診療を続けます。
 水谷先生ありがとうございました!

投稿者 sapporobiyou : 23:59 | コメント (0)

2008年05月10日

焼身自殺の悲惨さ

 平成20年5月10日の北海道新聞朝刊で、
 私の日記(ブログ)のことを取り上げていただきました。
 平成20年5月1日に書いた硫化水素自殺についてです。
 記事を書いてくださった、記者さんに感謝します。
 これで少しでも、硫化水素自殺が減ることを願っています。
      ■         ■
 硫化水素自殺よりもっと悲惨なのが…
 焼身自殺です。
 平成19年5月29日の日記に書いてあります。
 もう一度繰り返します。
 焼身自殺は簡単に死ねると思うかもしれません。
 ところが自殺法の中で、
 一番最後まで意識があって苦しむのが焼身自殺です。
      ■         ■
 人間や動物が死ぬ時は心臓や呼吸が止まり、
 脳や臓器に酸素が行かなくなって死にます。
 熱傷を受傷しても簡単に心臓は止まらず、
 意識もあります。
 自分の体が黒焦げになって、
 手も指も炭のようになっているのが見えます。
      ■         ■
 何度もなんども手術を繰り返しても、
 ‘絶対’に元のキレイな皮膚には戻れません。
 指もなくなってしまいます。
 さらに、自殺は自己の重大な過失による外傷なので
 原則的に健康保険は使えません。
 救命救急センターに入院すると、
 入院費が最高で一ヵ月に1,000万円にもなることがあります。
      ■         ■
 私が治療を担当させていただいた患者さんで
 数ヵ月に及ぶ治療費が2,000万円にもなって、
 両親が家を売って支払った症例もありました。
 残念なことに結局その方は亡くなりました。
 医療従事者にとって…
 懸命に治療したけれど命を救えなくて、
 治療費の借金だけが残った症例はとても悲しくつらいものです。
 (ここまでが、昨年の日記の内容です。一部改変)

      ■         ■
 平成20年5月10日、朝日新聞朝刊には、
 自殺で死に切れなかったので、
 人を殺して死刑にしてもらうために…
 殺人を犯したという、記事が掲載されていました。
 自殺者は増えており、避けては通れない問題です。
 自分が死にたいから、他人を殺して死刑にしてもらう…
 考えただけでも、ぞっとします。
      ■         ■
 われわれ医療従事者、
 特に救急医療に携わった者は、
 自殺の悲惨さをよく知っています。
 自殺したら…
 こんなになっちゃうょ!
 こんな屍(シカバネ)になっちゃうょ!
 それでも、そんな死に方を選ぶの?
 という情報が少ない気がします。
      ■         ■
 医学部6年間の教育の中で…
 焼身自殺をしたら、
 こんなになってしまうという授業はありません。
 熱傷(ヤケド)についての講義はありますが、
 どんな自殺法で…
 どんな状態になるか…?
 法医学の講義を真面目に聴いていると、
 少し出てくる程度でしょうか?
 それでも、救命救急センターで行われている…
 広範囲熱傷(重症のヤケド)の実態はわかりません。
      ■         ■
 焼身自殺をすると…
 自分の体が、
 動物の丸焼き(トリとかウシ・ヒツジなど)と同じになります。
 激しく焼けると、顔かたちもわからなくなります。
 一部だけ激しく焼けて、
 両下肢の切断になってしまった方もいらっしゃいました。
 とにかく、身体の損傷が一番激しい死に方の一つです。
      ■         ■
 また、焼身自殺を自宅や建物の中ですると…
 火災になります。
 自殺による火災には、保険がおりません。
 そればかりか、高額の損害賠償請求が待っています。
 つまり、残された家族は高額の治療費の他に
 自殺の巻き添えで火災に遭った人から…
 莫大な金額を請求されます。
 火災で他人を殺してしまったり…
 消火作業に当たった消防士さんが殉職なんてこともあります。
      ■         ■
 それだけ焼身自殺は悲惨です。
 自殺が未遂に終わり…
 全身大ヤケドで生き残ると… 
 生涯そのキズは元には戻せません。
 硫化水素自殺も
 焼身自殺も
 決して楽な死に方ではありません。
 人殺しをして死刑になろうと思っても…
 簡単に死刑にはしてくれません。
 長い裁判が待っています。
 国や厚生労働省は、
 自殺予防をもっと積極的に取り上げて欲しいです。
 マスコミの方も、よろしくお願いいたします。

投稿者 sapporobiyou : 10:27 | コメント (0)