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2007年07月08日
Body Jetによる移行部(お尻下)~太もも外側の脂肪吸引
先日ブログで取り上げたBody Jetで、移行部(お尻下)~太もも外側の脂肪吸引モニター手術を行ったので、経過の報告です。Body Jetは、局所麻酔のみで脂肪を吸引する新型機器です。
通常当院で脂肪吸引を行う場合は、静脈麻酔や全身麻酔で眠っている間に局所麻酔や体外式超音波、そして脂肪吸引を行っています。理由は、目が覚めたままの脂肪吸引は痛いからです。
当然麻酔はするのですが、脂肪に局所麻酔を注入する時が痛いのです。他の美容手術でも局所麻酔をしてから手術をするわけですが、脂肪吸引の麻酔の範囲は他の手術に比べてとても広範囲ですから、例えば二重まぶたの手術で麻酔をする時のように、一瞬チクッとしただけで終わるわけではありません。
また、局所麻酔注入後は目が覚めていても普通は無痛で手術できるわけですが、脂肪吸引の場合は、脂肪と同時に局所麻酔も吸引除去していくので、吸引が進むにつれて痛みが出てきてしまうこともあります。
誰だって痛いのは嫌ですからね。医師の立場から言っても、手術中に患者様から痛いと指摘されるのは辛いことで、その都度麻酔を追加することはできますが、あまり何度も痛い痛いということになると、本来の目的である脂肪吸引を十分にできなくなってしまう可能性があります。
また眠る麻酔の場合は、手術中の記憶がないわけですので、手術中の痛みだけではなく、恐怖感からも解放されるというメリットもあります。
しかし眠る麻酔を使用するデメリットもあります。
一つ目は費用の問題。眠る麻酔をかけるということは一時的に患者様の意識をなくすということです。これを終始安全に行っていくためには、口や鼻から酸素などを吸入したり、意識がない間に身体に異変が起こっていないかをチェックするモニタリングと呼ばれる機器を装着したり、患者様やモニタリングを監視するために専任の医師やスタッフを配置したりする必要があります。このため別途費用がかかってしまいます。
二つ目は手術後の回復時間。局所麻酔は意識がある状態で手術していますから、手術が終われば即帰宅もできます。これに対して、眠る麻酔は手術が終わってもしばらくボーっとしていますし、中には麻酔が覚める時に吐き気を伴う人もいるので、これらの症状が軽くなるまで、手術後に数時間くらい院内で休んでから帰宅することになります。
三つ目は手術中の体位の問題です。脂肪吸引は体型を整える治療ですから、吸引する部位によっては、手術中に体勢を変えて吸引したり仕上がり具合をチェックしたりというのが重要です。目が覚めていれば、患者様に協力していただき手術中に体勢を変えるのが容易ですが、眠って意識がない場合は吸引中に仰向けや横向け、うつ伏せなど体勢を変えるのも一苦労です。また目が覚めていれば、場合によっては、手術中にベッドから下りて立った姿勢で仕上がりの確認をすることもできます。
脂肪吸引を眠って行うのが良いか、起きている状態で行うのが良いかは、実は上記に触れた以外にも様々な相違点があり、ドクターの考え方によって賛否両論です。しかし局所麻酔のみで終始ほとんど痛みがなく、かつ十分に脂肪吸引ができるとすれば確かに魅力的であり、これを実現できるという新機種がBody Jetです。またBody Jetは麻酔液をジェット水流のように噴射して、脂肪層内の血管や神経は痛めずに脂肪だけを選択的に崩してくれるという機能もあるので、手術中の出血が非常に少なく、術後の内出血も大変少ないという特長もあります。
今回のモニター手術は、Body Jetの使用によって、本当に局所麻酔だけで大した痛みもなく十分な脂肪吸引ができるのかどうか、手術中の出血の程度や術後の回復に関して従来機種と違いがあるかどうか、ということを確認するために行いました。もちろんモニター患者様には手術前に趣旨を十分に説明し、同意を得ています。
結果は以下の通りです。
ただしBody Jetをはじめて(正確に言うと2回目)に使用した僕が感じた結果であることをご了承ください。
1.局所麻酔注入時の痛みについて
今回の手術では、患者様は結構痛がっていました。Body Jetは局所麻酔液の注入スピードがマニュアルで設定できるので、マニュアル通り最も遅いロースピードでゆっくりと注入してみたのですが、それでも注入部位によっては患者様が結構痛がる場面もありました。全体としては何とか我慢していただける程度ではあったと思います。普段は眠る麻酔をしてから麻酔液を注入しているので、全く痛みの反応をしない状態ですから、それと比べてしまうから、僕が痛みの反応を過剰に受け止めただけかもしれません。また、ある程度麻酔を入れてから、スピードアップのために麻酔注入のスピードをアップしたところ、やはり痛みが増してしまい、局所麻酔単独の場合はロースピードで終始行う必要があると思われました。
今回手術した臀部下側(通称 移行部)~太もも外側の場合、眠る麻酔をしてから麻酔液を注入する時は超ハイスピードで一気に注入しますから、注入時間は、体位の移動時間などを除けば、左右合計してせいぜい5分程度ですが、Body Jetの最も遅いスピードで注入し、かつ途中に痛みが伴ったため少し休憩しながら行ったので、麻酔の注入に合計約50分を要しました。マニュアルDVDでは、同様の範囲を合計30分程度で注入していましたから、ちょっと時間がかかりすぎたと思います。
今回のモニター手術では、実は下の写真の手術デザインを見ていただければ分かるように、太ももの内側も同時に吸引する予定をしておりました。しかし手術予定時間が明らかに延長してしまったことと、患者様の苦痛を考慮して、太もも内側は後日吸引することになりました。
後日、同一の患者様に当院の通常の麻酔および吸引方法で手術を受けていただくことで、手術による痛み、術後の経過などを今回と比較出来るので、手術を分けたことは、かえって良かったかもしれません。
2.吸引中の痛みについて
従来の吸引だと、はじめに麻酔を注入したら、その後は一気に吸引していきます。ですので、目が覚めていると吸引の後半には痛みがともなう可能性があります。Body Jetの場合、吸引管が2重構造になっていて、同一の吸引管に、吸引する機能と、麻酔のジェット水流を噴射する機能の両方が内蔵されています。そして実際に、吸引しながら同時に麻酔ジェットを噴射します。この機能によって、常に脂肪の破砕と麻酔の追加を行ないながら、吸引を行っていくことができます。
今回の手術でも、目が覚めている状態での吸引でしたが、麻酔の追加によって、確かに手術が進むにつれて痛みが増すことがなく吸引を終えることが出来、優れた機能だと実感しました。ただ麻酔の注入を追加し続けることで、吸引がある程度進んでも外見が膨れて見えるので、吸引終了のタイミングを見誤ることが無いように、頻繁にチェックすることが重要だと思われました。
2.吸引脂肪について
従来の吸引では、吸引管で脂肪を崩しながら吸引していくのに対して、Body Jetでは麻酔のジェット水流で脂肪がドロドロになるので、これを吸い出す感じということでした。実際に吸引した脂肪は確かに通常の吸引内容に比べると粒子が細かく粉砕されドロドロになっている感じはありました。しかし麻酔液のジェット水流をハイスピードにしないと、脂肪の破砕も不十分な印象がありました。今回の局所麻酔のモニター手術に先だち、別のモニター患者様に対して、眠る麻酔を行ってからBody Jetの麻酔ジェット水流をハイスピードで注入して吸引をしたのですが、この時のほうが脂肪細胞の破砕が十分に為されていたと思います。したがって今回のように局所麻酔をロースピードで注入しただけでは、脂肪の破砕は物足りない感じがしました。
3.手術による出血、術後の皮下出血について
ジェット水流で脂肪だけが破砕された効果と見るべきか、麻酔時間が長かったために麻酔液の中に含まれるエピネフリン(血管収縮剤)が十分に効いたからと見るべきか、明確には判断できませんが、確かに吸引中の出血はごく少量だけでしたので、安全性には優れた手術法であると考えられます。また、下の症例写真を見ていただければ分かるように、術後の皮下出血も非常に軽く、回復期間も短縮できると思われます。
ただこれらの点については、従来の吸引に、当院で採用している体外式超音波を併用することでも、それに近い効果は得られていると思います。
4.手術の結果について
現時点では途中経過でしか判断できませんが、当院の現在の方法(体外式超音波脂肪吸引)と比較して、勝るとも劣らない手術結果は得られると思われます。
5.総括
安全性や治療効果に関しては全く問題はなく、優れた器機であると感じました。しかし、局所麻酔単独で行う前提では、肝心の麻酔液のジェット噴射の性能を十分に発揮させるのは難しいのではないかと思いました。
麻酔液のジェット水流のスピードは、スピード1から5までの5段階に変えることができるのですが、局所麻酔で行う場合は、結局痛みの回避のために最も遅いスピード1~2までが限度でした。これを眠る麻酔を併用してスピード5で行うほうが、Body Jetの性能を活かし切れると思いましが、それではそもそも局所麻酔だけで行う脂肪吸引という大前提が崩れてしまいますので、この点がこの手術法の今後の改善点ではないかと感じました。
最後に症例写真を供覧します。
まずは手術前のデザインです。
手術前と手術3日後の比較です。まだ術後の腫れが残っていますが、青矢印の部分の変化に注目してください。
写真上では太もも内側も少し細くなったように見えますが、先にご説明した理由で、吸引は移行部(臀部~太もも外側)のみ行っています。
後ろ側から見た比較写真です。同様に青矢印の部分の変化に注目してください。この部分の膨らみが取れると、脚が長く、お尻の位置が高くなったように見えるのが分かると思います。
側面の比較写真です。ヒップアップしている変化が分かると思います。
吸引内容です。上澄みの黄色い部分が脂肪で、下のオレンジ色は吸引した麻酔液(若干の血液を含む)です。
投稿者 ginzamiyuki : 2007年07月08日 10:37