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2008年04月26日

美容外科医の想い

 いろいろとご紹介したい、お写真もあるのですが、なにぶん組み写真(ほぼ同じ条件で並べないといけません^^;)をつくるのが結構手間なので、今日は美容外科医をやっていて忘れられないエピソードを書いてみようと思います。

 もう4年ほど前になるでしょうか。今は、美容外科の施術はダンピングが激しいのですが、その当時は美容外科手術は高いのが当たり前の時代でした。だからこそ、特に個人クリニックなどにいらっしゃる患者さんは手術自体を受けることを本当に真剣に考えて、調べてからいらしていたように思います。その中で、当時うちは埋没法が73500円(相場は10-12万円程度だったと思います)と、安いほうでした。

 基本的には脱毛や埋没(もちろん、適応が見れるか等々本来はおくが深いのですが、言い換えてしまえば、糸をかけるだけの施術なので^^)など、あまり技術を要しないものについてはリーズナブルに提供しよう、というコンセプトが当時あったからなのです。

 ある、30歳くらいの女性の患者さんがその73500円を多分必死にかき集めて、当院へいらっしゃいました。非常に清楚なきれいな方で、もともと二重だし、そのままでも十分ぐらいの方でした。そんなことを思いつつご希望を伺うと、本当に気持ち二重の幅を広げたいということでしたので、もちろん埋没法の適応は十分にありましたし、どれくらい腫れるとか内出血等々、多少のリスク(埋没には取り返しのつかないリスクはほぼありませんが、何回も繰り返しているといろいろおきて来ます^^;)もご理解いただけたようでしたので、手術をお受けすることにしました。

 施術の直前彼女の口から、「先生、学割とかってないんですよね?」

 私は「そうですね、うちでは残念ながらそういう制度はとってないんです。でも、どうしてですか?」と答えつつ、30歳で学生さんをやれるのはむしろ贅沢なんじゃないかなあ、なんてちょっぴり心の中で思っていました。

 彼女は「私、●●っていう目の病気で、盲学校へ通っているんです。」

 一瞬、私は言葉を失ってしまいました。●●は原因不明の難病で、少しずつ、でも確実に視力がほぼゼロになっていく、しかも治療法がまったくない病気だったからです。失明していくにあたり、準備のために点字等勉強に通っていたのですね。

 さらに彼女は続けて「今はまだ近くは見えますし、お化粧もできるのですが、そのうちほとんど見えなくなってしまうので、何もしなくても(お化粧ができなくなっても)少しでも綺麗でいられたらと思って、今のうちに手術をしておきたいんです。」

 彼女の事情も知らずに、学割なんて贅沢だ、と思った自分を非常に恥じたと同時に、彼女の切ない女心を考えると、私はこの人にどうしてあげたらいいんだろう、と思い、看護師さんたちが準備を整えている間の数分間、非常に悩みました。情けない話、手は震えてくるし、涙も出てくるし、簡単な手術ではあるものの、施術自体できるかな?と、自分の震える手をみて悩みました。手が震えるなんてことは私はめったにないのですが。。。

 自分で自分を抑えつつ、「私は美容外科医なんだ。」と、何度も頭の中で唱えました。そう、私は彼女の保護者でも、友人でもなく、医療の助けを求めてこられた美容外科医なんです。これから私が彼女の面倒を見てあげられるわけでもないし、唯一私が彼女にやってあげられるのは、彼女の切ない気持ちと必死にかき集めてきたであろう金額に対し、少なくとも恥じない仕事をすることなんだ、と思いなおして必死に自分の気持ちを切り替え、御代をいただいて手術をさせてもらいました。

 後にも先にも、これだけ冷や汗をかいた埋没法はありませんでした(苦笑)。。。

 技術を売る、しかも相手は生身の人間で、医師免許がなければ手術、つまり人を切るのは犯罪です。我ながら因果な商売です。

 研修医時代、一年救命救急センターにいたときには、あらゆる人(多分1000人に近いと思います)の死に直面してきました。もちろん、形成外科医になってからも悪性腫瘍等で亡くなられる患者さんを目の当たりにしてきました。

 それも苦しかったですが、相手が元気でしかも綺麗になることを求められること、これが美容外科医の仕事であり宿命です。しかも軟部組織は時にわれわれ外科医の言うことを聞いてくれません。特に修正などは、瘢痕組織のためにさらにわれわれの言うことを聞いてくれなくなります。もちろん、手術結果にお互い首をかしげることもあり、修正をさせていただいたり(私もプロなので、取り返しのつかない失敗はしたことがありませんが)、当然ですが、もう一度苦痛を味あわせなければいけないこともときにあります。
もともと、手術は魔法ではないので患者さんのご希望に添えないこともあります。きちんとカウンセリング時にご希望を汲み取ってあげられなくて、施術は成功だけど患者さんにとっては不本意、ということもあります(ですのでなるべくカウンセリングには時間をかけることにしているのですが)。

 こういう時の患者さんの悲しむ姿を見たときの敗北感は言いようもないのですが、ただ、ぴたっと決まったときの喜びと患者さんの笑顔は他の科では味わえない醍醐味があります。自分が施術をした患者さん(失礼ながら作品)へのなんと言ったらいいか、愛着(?)は、美容外科医・形成外科医ならではでしょう。

 で、その醍醐味率を限りなく高いものにするために、日々努力をします。本来なまけものの私が努力ができるのは、この分野だけかもしれません(笑)。

 どうか、あの方(おそらく今はほぼ全盲に近いのではないかと思われます)の埋没が取れていませんように。「私はお化粧をしなくても、綺麗なのよ」、と自信をもって生活をしていただけていれば、美容外科医にとってこれほど冥利に尽きることはありません。
 

投稿者 y.mitoma : 2008年04月26日 15:18