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2008年06月28日

私の下眼瞼除皺術に対するコンセプト#1

 -下眼瞼除皺術の難しさ-

 では、今回はやや壮大な私の下眼瞼除皺術に対するコンセプトについて述べていきたいと思います。

下眼瞼除皺術における目標は、
ずばり、「低い合併症率で、高い若返り効果のある治療法」です。
当たり前ですね。誰だってそう思って治療に取り組んでいるでしょう。しかし、これが下眼瞼に関しては、ことさらに易しくありません。

まず、どうして下眼瞼の除皺術が難しいか説明します。

<外反について>
前々述のように、下眼瞼は重力に抗って立ち上がっています。“瞼板”という硬い組織が支持組織としてあり、これが内眼角靱帯および外眼角靱帯という靱帯組織で、眼窩骨に留まっています。これを倒れないようにサポートするのが眼輪筋の緊張(トーヌス)で、皮膚が足りなくなったり、眼輪筋が麻痺したりすれば、前方に倒れるわけです。
つまり、
下眼瞼の立位を保つ要素は
1) 瞼板、靱帯を通じての強さ
2) 眼輪筋の緊張

外反を起こす要素は
1) 瞼板、靱帯などの弛緩(ゆるみ)
2) 眼輪筋の麻痺
3) 皮膚の不足
というようにまとめることができます(下の図表参照)。

Blog01.gif

このバランスが崩れると内反したり、外反したりするわけです。

皮膚を切除する除皺術は、皮膚を取るわけですから、ちょうど良ければいいですが、取りすぎれば、前方に倒れます(外反)、つまり、皮膚を取ってシワが伸びるためには、下眼瞼が皮膚がピンと張っても倒れない十分な立位を保つ力も持っている必要があるわけです。
また、ハムラ法は一般的に皮膚を取る量を少なめにしても、定型的下眼瞼除皺術(皮弁法や筋皮弁法)に比べて、外反しやすいといえます。これは、眼窩下縁部への眼窩脂肪の移動を行うために、剥離範囲が広くなり、眼輪筋の一過性の麻痺が高度になることが一番の原因であると私は思っています。そのため、外反予防の目的で、外眼角靱帯の固定を行ったり、眼輪筋を上方に牽引して骨膜に固定したり工夫をしているわけです。
この外反という下眼瞼美容手術で最も怖い合併症を起こしたくないがために、私自身も経験がありますが、剥離範囲を狭くして、皮膚の切除量も少なめにして、保守的に手術を行った結果、全然しわが改善していない、というトラブルケースをよくみかけます。

<外反を防ぐために>
私は、経結膜的眼窩脂肪移動術は若い人だから、皮膚切開なしでと思い始めたのですが、その後、Dr. R. A. Goldberg, Dr. H. Kawamotoらの論文に、
経結膜アプローチで眼窩脂肪移動を行う下眼瞼手術は、
1) 皮膚を切除しない、眼輪筋を損傷しないことで、外反が著明に少なくなる。
2) 皮膚を切除しないでも目袋がなくなるため中高年者でも若返り効果は十分である。
3) 必要があれば、ケミカルピーリングやレーザーリサーフェシングなどで皮膚をタイトニングすればよい。
と、いうような内容を記述してあるのを読んで、
“皮膚を切開しなければ,眼輪筋も損傷しないので、外反は少なくなる”
そりゃそうだ!!と思ったのです。
しかし、皮膚切除は外反のリスクを冒すとの兼ね合いを考慮すると、それに見合うだけの意味がないというような意見で、すぐには賛同しかねましたが、今では私もそう思っています。

つまり、皮膚を切除するという操作は、下眼瞼がどれだけ倒れずに持ちこたえる力を持ってるかを厳密に見極める能力が必要となり、この見極める力が術者の技量となるわけです。が、“そんなのやめよう”というのが、私の考えです。経験積んで神業を得たとしても、100回、200回連続でうまくいくわけがありません。技術の熟練によって合併症率が徐々に下がるだけで、急に下がるはずがありません。術式を変える、概念を変える必要があると思うのです。

そこで、外反という合併症を避けつつ、十分な若返り効果を得るための私のコンセプトは
1) 経結膜でアプローチし、皮膚は切除しない
  そうすることで眼輪筋も損傷せず、外反が圧倒的に生じにくくなります。
2) 皮膚の余剰は、レーザーを用いて治療する
 皮膚のシワは、何回かに分けてタイトニングしていきます。最近ではいろいろな皮膚タイトニング用レーザーがあり、当院でも、もっと効果の高いものを求めていろいろと試したりもしています。治療が複数回になりますが、一度に切除量を決めるのと異なり、勝負しなくて良いわけですので、安全です。さらに、下眼瞼全体の皮膚の質感の改善にもなります。

投稿者 momosawa : 15:33

2008年06月27日

“ハムラ法”という呼称について

 では、今回より私の下眼瞼除皺術のコンセプトについて説明していきます。

 まずは、ハムラ法という呼称について私見を述べたいと思います。

 現在、日本では下眼瞼の除皺術においてハムラ法と呼ばれる方法が大変有名であります。しかし、当のSam T. Hamra先生はこのような呼ばれ方、用いられ方をするとは、思ってもいなかったであろうと思います。
 というのは、
 1995年ダラス(Dallas)のSam T. Hamra先生は、内側から外側までの全長にわたり、眼窩脂肪を引き出し、眼窩下縁に移行し固定する方法を報告しました。これが、本邦(日本)でいうところのハムラ法です。しかし、本術式はcomposit rhytidectomyの中での中顔面の若返りの一部分として報告されたのであって、単独で下眼瞼の若返り法として報告されたものではありません。したがって、このSam T. Hamra先生の報告の一部をとってハムラ法と呼ぶのは、Sam T. Hamra先生の意思には反しているとも考えられ、私は、本当は正しくないと思います。

 しかしながら、実際には一般世間のみならず、医者の間でもハムラ法と呼び合っています。したがって、日本では、ハムラ法で便宜上通用するといえます。

 そこで、私が思うには、日本での“ハムラ法”の定義は、
1) 皮膚を睫毛下で切開、切除する。
2) 眼窩脂肪を内側から外側まで引き出し、眼窩下縁に移行し固定する。
3) 眼輪筋を外眼角部に引き上げ固定する。
などを、行う方法のことをさすと思われます。

 しかし、私が数年前に形成外科学会で発表した際には、“経結膜的眼窩脂肪移動術”と呼び発表しましたが、ある大御所の先生に、「つまり経結膜のハムラ法ですね」といわれました。
 とすると、つまり、皮膚切開でなくともハムラ法と呼んでしまうということは、2) の“眼窩脂肪を内側から外側まで引き出し、眼窩下縁に移行し固定する”をハムラ法と呼んでいることになってしまいます。これは、本当は正しくありません。正しくは、経結膜で行うハムラ法みたいな方法でしょうか??
 しかし、実際には、“眼窩脂肪を引き出し眼窩下縁に固定する操作”がハムラ法の特徴であり、この操作自体がハムラ法と呼ばれる傾向があり、用語の混同を招いているわけです。

以上、日本でいうハムラ法とは、
 “皮膚を切開して、眼輪筋形成、皮膚切除も行う方法”をさすといっていいでしょう。
私が、主に行っているのは“経結膜的眼窩脂肪移動術”であって、ハムラ法というのは本来正しくありません。

 いつの間にか、ネット上では“裏ハムラ”と呼ばれるようになって、うまいこというなあと、思いもしましたが、少し誤解を呼ぶ呼び方なので、注意が必要です。

投稿者 momosawa : 15:22

2008年06月19日

経結膜的眼窩脂肪移動術#2

 一方、ちょうどその頃、私のもとには、ある掲示板をみた“目のくま”を主訴とした眼瞼周囲色素沈着症の患者様が多数、訪れていました。いわゆる“茶ぐま”です。この患者様の中には、本当に色素沈着があって、目元が茶色くなっている人もたくさんいらっしゃいましたが、実際には目袋変形や鼻頬溝(nasojugal groove あるいは、tear trough deformityと呼ばれます)が目立つ、いわゆる“影くま”の患者様がたくさんいらっしゃいました。

 影くまはレーザーや外用剤では、良くなりませんので手術の適応となります。そこで、私の経結膜的眼窩脂肪移動術が始まりました。
 最初の患者様は、20代のtear trough deformityが目立つ患者様(図1)でした。脱脂では、返って溝が目立ってしまうように思えて、ハムラ法が最も影が消えると思ったのですが、まだ若い患者様でしたので、皮膚を切除する必要はないし、皮膚を切らずにハムラ法ができれば、キズも残らずいいのになと、このとき思ったのです。経結膜アプローチで眼窩下縁の骨折が治せるのだから、眼窩脂肪の移動(ハムラ法)ができないわけがないと思い、正直に経結膜法でのハムラ法はまだやったことないけど、それぞれ別々にはやったことがあって、できると思う、と、患者様に話してみたところ、是非やってくださいと、言ってくれたのです。

tracon-fatrepo01.jpg

この勇気ある20代の男性患者様が私が行った経結膜的眼窩脂肪移動術の第一例目です。
このときは、私が世界ではじめて経結膜アプローチでハムラ法を行ったと思っていました。
 しかし、ただ不勉強だっただけでした。調べると、すでに同様の方法をDr. Goldberg、 Dr. Kawamoto、 Dr. Nasiffなどの美容外科の大家たちがすでに多数経験し論文にまでしていました。
 正直、ガッカリしましたが、彼らの論文を読み勉強したことでいくつかのアイデアが生まれました。
 その時、勉強した内容は
 1) 皮膚切除を行うことは、下眼瞼外反のリスクを背負う割には、皺を取る効果は弱い。
 2) 経結膜アプローチは、経皮アプローチに比べて、合併症がすくなく、安全である。
 3) 皮膚のタイトニングは、ピーリングなどで別におこなう。
 4) 眼瞼の加齢感は、皮膚の変化だけではなく、目袋変形やtear trough deformityも関係しており、皮膚をいじらずにこれらを改善するだけでも、かなり若返ることができる。

 そこで、中高年以降の患者様のいわゆる下眼瞼除皺術に、ハムラ法を行うと合併症がおおいことに悩んでいた私は、
まず、経結膜的眼窩脂肪移動術で目袋変形やtear trough deformityを改善する、つまりベースを整えておいて、皮膚はレーザーでタイトニングすることで、外反のリスクを回避した下眼瞼除皺術が可能になるという方法にたどり着いたのです。

つまり、
現在、私は経結膜的眼窩脂肪移動術の最大の利点を、合併症が回避できることと主張していますが、
私が経結膜的眼窩脂肪移動術をはじめたきっかけは、眼窩脂肪移動術の適応だが若い患者様だから皮膚を切開する必要がない、だから経結膜アプローチで眼窩脂肪を移動した。ということだったのです。

次回からは、具体的にどの様な利点・欠点があるのかを説明していきます。

投稿者 momosawa : 19:32

経結膜的眼窩脂肪移動術#1

 最近、クリニック日比谷で流行の経結膜的眼窩脂肪移動術、通称“裏ハムラ”ですが、ときどき、掲示板などでの書き込みをみていますと、正しい概念が伝わっていないように感じられます。
 ですので、今回から数回にわたり、私が最近、経結膜的眼窩脂肪移動術を頻用するようになった経緯、また本法の概念、利点や欠点について、詳しく述べていこうと思います。

 ここ最近、原著論文や総説などいくつか、本法に関する医学論文を執筆しましたが、論文では、紙面が限られていたり、私見は述べにくかったりするので、そういったものにとらわれず正直なところを記述していきたいと思います。

 今回は、経結膜的眼窩脂肪移動術 #1として、私が経結膜的眼窩脂肪移動術をはじめるに至った経緯について述べたいと思います。


 私は、形成外科医として美容外科診療に関わるようになってから、下眼瞼の美容手術については、定型的下眼瞼除皺術(皮弁法、筋皮弁法)、とそれに脱脂を追加したもの、ハムラ法と順に習得してきました。また、目袋変形には経結膜眼窩脂肪切除術(いわゆる脱脂)が有効と教わりました。
 定型的下眼瞼除皺術だけでは、目袋がなかなか良くならないなと思っていたところに、ハムラ法を習得して、ハムラ法の目袋変形に対する治療効果には感銘を受けました。しかし、その後、経験を積むに従い、合併症に悩み出しました。

下眼瞼の除皺術は、一言でいって、下眼瞼外反との戦いです。下眼瞼は人体の中では珍しく重力に抗って下から上に立ち上がった構造をしています。これが前方にひっくり返った状態が外反です。皮膚を切除したり、眼輪筋が麻痺したりすると容易に外反が生じます。“あっかんべー”の状態です。皺を取ろうとして、下眼瞼の皮膚を切除すれば、当然下眼瞼は下に引っ張られて外反しやすくなります。下眼瞼がひっくり返らないで頑張っていてくれないと、皮膚を切除しても皺がなくならないわけです。ですから、外眼角固定術を行ったり、眼輪筋を上方に牽引して固定したりして、下眼瞼が外反しにくい状態にして、皮膚を取るなどの工夫をするわけです。しかし、釣り合いのちょうど良いポイントはとても難しく、長年の経験や勘が必要です。加えて、人によっても下眼瞼のひっくり返りやすさが異なります。これを術前に予測するための検査方法がいくつかありますが、何ミリ取ればよいという明確な答えが出るわけではありません。やはり術者の経験と勘です。
そこで、私はまず、ハムラ法をもっと勉強することにして、ハムラ先生その他の英語の医学論文を時代の順に一生懸命読破しました。その際、勉強して理解したことは、
 1) われわれ日本人がハムラ法と呼んでいるのは、眼窩脂肪を眼窩下縁の下方に移動する術式を従来の眼瞼除皺術に加えたもので、これはハムラ先生がおこなっているtotal face rejuvenation surgeryの一部にすぎないこと。
 2) transcantho-canthoplasty、やmuscle plastyなど様々な外反予防の工夫をしていること
 3) 眼窩脂肪はなるべく温存すべきと主張していること。
などです。

投稿者 momosawa : 19:30

2008年06月14日

ご挨拶

 はじめまして。クリニック日比谷ソフィア院非常勤医師の百澤明(ももさわあきら)と申します。現在、クリニック日比谷ソフィア院に毎週平日1日と週末に月2回ほど勤務しております。常勤先は、埼玉医科大学総合医療センター形成外科・美容外科に勤めております。
 今回、私もブログを始めさせて頂くことになりましたので、よろしくお願いいたします。
 
 まずは、最近の私のライフワークとなっております眼瞼の若返り手術を紹介していきたいと思いますが、今回は私の経歴を紹介しておきます。


 私、百澤明は、群馬県前橋市で生まれました。6歳まで前橋で育った後、親の仕事の都合により、京都府亀岡市に引っ越しました。ここはとても自然豊かな山間の町で、野山を駆け巡り小学校時代を過ごしました。小学校6年生の時に神奈川県の茅ヶ崎の近くの寒川町に引っ越し、約1年半という短い期間を過ごした後、埼玉県浦和市(現:さいたま市)に移り住みました。公立の内谷中学校から県立浦和高校へと進学した後、運良く浪人せずに山梨医科大学医学部に進学しました。
 山梨医科大学を平成7年に卒業し、一度は山梨医大の皮膚科に入局したのですが、形成外科診療斑の仕事にも携わっているうちに、形成外科医になりたくなってしまい、平成9年の春、医者として3年目の春に、東京大学形成外科学教室に入局しました。
 東大の形成外科に入局し、最初に配属になったのが自治医科大学形成外科でした。ここでは、たくさんの症例と上司に恵まれ、多くの経験をさせてもらいました。その後、湯河原厚生年金病院形成外科勤務を経て、平成13年(2000年)に初めて東大勤務になりました。ここで吉村浩太郎先生と出会ったことが、私の美容外科医としてのキャリアの始まりといって良いと思いますので、私の美容外科医としての経験はまだせいぜい8年といったところです。
 この東大勤務時代に三苫葉子院長と出会って、今現在のクリニック日比谷勤務があるわけです。

 今後、私の得意分野を中心に、ブログを展開していきたいと思います。 
 息抜きの小話も挟んでいきますので、よろしくお付き合いください。
                              百澤 明

投稿者 momosawa : 13:31