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2009年05月08日
下眼瞼の論文
アメリカのニューヨーク大学から、tear troughの成因に関する詳しく、かつすばらしい論文がPRS誌に発表されましたので、ご紹介したいと思います。
私も大変勉強になりましたので、形成外科や美容外科の先生方は一読されることをお勧めします。
以下に、私が内容について要約し解説します。
表紙とFigureの一部をアップします。
下まぶたの内側下方にできる溝は、tear trough、あるいはnasojugal grooveなどと呼ばれています。これは、人によっては、下まぶたの外側まで伸びており、この部位では、palpebromalar groove とか、lid/cheek junctionと内側のものと別の呼び名がついています。
tear troughおよびlid/cheek junctionの成因について、
過去には、1) 眼窩隔膜が眼窩下縁に付着しているため 2) 上唇鼻翼挙筋と眼輪筋の間にすきまがあるため 3) trough の真上の皮下脂肪が欠如しているため
などが指摘されてきたわけですが、
本論文は、美容上の問題になるこの溝が、なぜ生じるのか解剖学的に調べ、過去に言われてきた上記の成因について検証するとともに、さらには解剖上はどうすれば、治療することができるのかについてもコメントしています。
対象と方法は、12体の新鮮屍体の下眼瞼総数24について、その脂肪、筋などの位置などを詳細に調べた。結果は以下に記します。
1) tear troughおよびlid/cheek junctionは、眼窩下縁より4~6㎜尾側に存在し、眼窩下縁に一致してはいない。また、この境界は眼輪筋のseptal portionとorbital portionの境界と完全に一致する。
2) tear troughおよびlid/cheek junctionを境界に皮膚の性状が大きく異なる。眼瞼側は、皮膚が薄く皮下脂肪は存在しない。一方、頬側は、皮膚が厚く皮下脂肪が存在し、これがいわゆるmalar fatである。
3) tear trough (つまり内側)部直下の眼輪筋下には、眼輪筋のseptal portionの起始がある。これは、眼窩下縁の4~6㎜尾側にある。そして、この筋の付着は強固で、この部分の骨と眼輪筋の間には脂肪や注入剤を注入する隙間は存在しない。
4) lid/cheek junction(つまり外側)の眼輪筋下には、orbicularis retaining ligamentが存在する。これも、眼窩下縁より4~6㎜尾側にあるが、その付近には、内側部とは異なり、注入剤を注入するような隙間が存在する。
これを、読んだ私のコメントとしては、
まず、私はorbicularis retaining ligamentが外側にしか存在しないとは知りませんでした。内側にも存在すると思っていました。内側にはないのが本当だとすると、私がligamentだと思っていたのは、内側の眼輪筋の起始部の表面のスジスジ(筋膜?)だったようです。どちらも、固い付着ですので、似たようなものですが、間違えていたのでしょうか?
また、tear troughおよびlid/cheek junctionが眼窩下縁の少し尾側に存在する事には気づいておりました。しかし、4~6㎜も尾側に存在するとは思っていませんでした。この研究はアメリカ人でのものですので少し人種差が存在するかも知れません。
眼瞼の皮膚には皮下脂肪がほとんどない事も知っていましたが、頬部の皮下脂肪(つまりmalar fat)の境が、tear troughおよびlid/cheek junctionに完全に一致するとは知りませんでした。
さて、この論文では、著者のHaddock先生は、解剖学的には、眼瞼部の皮下に脂肪がない事が原因であるので、この層に脂肪を移植するのがよいと、コメントしています。しかし、同時に皮膚が薄いため、凸凹になってしまうので、現実的ではなく、
実際の所、過去に諸家によって報告されてきた様々なtear troughおよびlid/cheek junctionを軽快させる治療方法の多くは、解剖学的には本研究の結果と矛盾するが、効果があるならよいのでは、みたいな記載をしています。
結局のところ、解剖学的には皮下に原因があるわけですが、この層に注入物をきれいに平坦に注入することは難しいということです。
以上を踏まえた私の戦略としては、
眼窩脂肪の温存という観点に立つなら、基本的には、
1) 経結膜的眼窩脂肪移動術(裏ハムラ)
2) ミッドフェイスリフト
3) 脂肪注入
4) レーザーリサーフェシング
を、組み合わせて治療を行う、今までのわれわれの手術方法は全く間違いではないと言うことを再確認した上で、
1) 内側の眼輪筋起始部は、tear trough deformityの原因であるので、しっかり剥離する。
2) ミッドフェイスリフトをする場合には、外側では、orbicuralis retaining ligamentを切離するとともに、さらに効果的な再固定の位置を模索していく。
この2点のみ、少しの改善点として、留意しつつ施術を続けたいと考えております。
出典
The Tear Trough and Lid/Cheek Junction:Anatomy and Implications for Surgical Correction. Nicholas T. Haddock, M.D. Pierre B. Saadeh, M.D. Sean Boutros, M.D. and Charles H. Thorne, M.D. Plast. Reconstr. Surg. 123: 1332, 2009.
オンラインジャーナルなどで入手できない方で、原著を手に入れたい方は、私までご相談ください。
akira@momosawa.org


投稿者 momosawa : 2009年05月08日 10:38