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2009年11月30日

研修医シリーズ ガーゼオーマ③

救急搬送されたこの患者さんの容態は、安定していました。

主治医は、当然T医師に決まりました。
輸血と、止血剤の投与で、脾臓からの出血はおさまり、意識もはっきりとしてきました。
どうやら、緊急手術はしなくても良いと言うことになり、みなほっと胸をなでおろしました。

しかし、患者の体内に残されたガーゼのことは、これ以上隠しておくことはできません。聞く所では、患者の甥は、歯科医とのこと。きちんと事態を説明し、謝罪することになりました。

数日後、患者の家族を呼んで、状況説明と、謝罪をすることになりました。
今回の主治医のT医師、肺がんの手術をした呼吸器外科部長、大動脈瘤の手術をした血管外科部長の3者以外は、立ち入りを禁止されました。
私達は、遠巻きに、この会の結果を、固唾を飲んで待っていました。

説明の会が終わり、みながカウンセリングルームから出てきました。
先に出てきた、呼吸器外科部長と、血管外科部長が、肩をゆすって、必死に笑いをかみ殺しながら廊下を並んで歩いて行きました。
「確か、きちんと説明したはずでしたよ・・・」
「そうだったよね、私も今思い出したよ・・・」
なにやら、こんなことを言っていました。

最後に出てきたT医師に、みんな駆け寄りました。あとは、T医師に聞いた話です。

まずは、今回の入院の経過を説明し、緊急手術の必要はなくなったこと。次に、ガーゼの件についての説明をし、3人で、家族に深々と頭を下げました。
家族は、きょとんとした表情で、3人は、拍子抜けしてしまったそうです。
家族を代表して、歯科医の甥が発言しました。
「ガーゼの件は、既に、前回の退院のときに、事実を告げられ、みな納得していました。
体内に残されたガーゼが、全て害をもたらすことではないことは、私もよく知っています。
事実、このガーゼのおかげで、大動脈瘤は、破裂せずに、おじも今日まで元気に生きてこられました。
こんなガーゼが、もし他の病院で見つかったら、この病院にご迷惑がかかるだけで、何の解決にもならないことを、家族にも申し付け、何かあったら、必ずこの病院のお世話になるように、徹底させてきました。
今回も、また、命を救っていただいて、家族一同、本当に感謝しています。」

こんな感じでした。

この患者は、すっかり意識も回復し、大好きだったT医師との再会も果たせ、とても喜んでいました。
T医師に向かい、
「また、あんたに会えるとは、思っても見なかった。ずいぶんと立派になったもんだ。
また、あんたに命を救ってもらった。ありがとう」
こう言い残し、今回も元気に退院していきました。

私がこの一件で感じたことは、患者とその家族と、医師の信頼関係の大切さ。
きちんとした態度で診療に臨み、誠意ある行動をとること。
患者にとって、最良の治療を選択すること。
などです。

それにしても、いい人たちだったなあ・・・。

おわり

投稿者 morita1967 : 2009年11月30日 17:55

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