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2009年07月28日

性同一性障害(3)

 前回はホルモン療法についてお話ししましたが、性同一性障害を解消するアプローチとしては、他に性別適合手術があります。今回と次回はMTFに焦点を絞り、性別適合手術とはどのようなものなのかを紹介します。今回取り上げるのは「睾丸摘出術」です。

 MTFの場合、女性ホルモン投与による効果が完全に出るまでには、だいたい1~2年程度かかります。一般にはこの間に、身体的性別の変化に伴う社会生活の変化を経験し、無理なく「新しい性での社会生活に適応」することを目指します。この「新しい性での社会生活」のことをRLE(Real Life Experience)というのですが、日本精神神経学会のガイドラインではこのRLEを一定期間経験することを重視しています。性別適合手術を受ける場合も、このRLEを経てから「最終ステップとして性別適合手術を行う」ことが推奨されています。

 しかし男性の身体に対する違和感や嫌悪感が極めて強い場合には、むしろ短期間で「新しい性」へと移行することが望ましいケースもあります。その場合にはホルモン療法に時間をかけるのではなく、短期間で効果が現れる「睾丸摘出術(去勢術)」を行います。狭い意味での「性別適合手術」は「性器の外観を調整する手術」であり、睾丸摘出術は含まないという考え方もあります。しかし「性別適合のための手術」という広い意味でとらえれば、睾丸摘出術も性別適合手術の一種と考えられます。

 施術方法は比較的簡単です。

(1)まず十分な消毒を行い、局所麻酔を施します。

(2)陰嚢の裏の目立たないところを数センチ切開します。

(3)切開したところから丁寧に睾丸を摘出し、切開箇所を吸収糸で縫合します。

 施術時間は約30分。翌日からシャワーを使うことができ、1週間目からは入浴も可能です。入院や施術後の通院の必要はありません。吸収糸は3~4週間で自然に消えてしまいます。

 睾丸摘出術を行うと、1~2ヶ月で以下の効果が得られます。

1.男性ホルモンの減少
2.乳房や乳腺の発育
3.皮膚がきめ細やかになる
4.髭と体毛の減少
5.頭髪の増加、禿の改善
6.筋肉の減少により、女性的な丸みをおびた体型となる
7.性欲の減退
8.勃起障害

 短期間でMTFの効果を得たい方に適していますが、次のような方にも適応します。

・女性ホルモンを投与しているにもかかわらず、女性化の効果が現れにくい人。
・長期間の女性ホルモンの服用が面倒な人。
・長期間の女性ホルモン投与に伴う副作用が心配な人。

 前回お話ししたように、女性ホルモン投与を行うと、最初の1ヶ月に抑うつ状態になるという副作用があることがわかっています。また長期的な服用に伴い、肝機能障害が生じることも珍しくありません。睾丸摘出術ならこれらの副作用を回避できます。

 睾丸摘出術は男性ホルモンの「元を絶つ」ことで、身体の女性化を促すものだといえます。これによって乳房や乳腺の発育や体毛の減少、頭髪の増加、体系の変化など、女性の身体的特徴が現れてきます。しかし性器の形状そのものは変化しないので、完全に女性の身体になるというわけではありません。当然ながら「女性として性交を行う」こともできません。

 性器の形状を女性のものに変えるには「陰茎反転法膣形成術」を行う必要があります。この施術は睾丸摘出も同時に行うので、睾丸摘出術の効果も得られます。

 次回はこの「陰茎反転法膣形成術」についてお話しします。

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投稿者 komuro : 11:10 | コメント (0)

2009年07月20日

性同一性障害(2)

前回に引き続き、性同一性障害についてのお話です。
今回はホルモン療法を紹介します。

 ホルモン療法とは、身体的性別とは反対の性ホルモンを投与することで、
二次性徴の一部を性自認に一致させようとするものです。身体的性別が完全に変わってしまうわけではありませんが、その特徴は緩和されていきます。これによって身体的性別に対する違和感を改善し、葛藤を少なくする効果があります。

 投与するホルモンは、MTFに対しては女性ホルモン(卵胞ホルモンや黄体ホルモンなど)、
FTMに対しては男性ホルモン(テストステロン)です。

 これらのホルモンを投与する場合には、必ず定期的に血液を採取して、
性ホルモンの血中濃度をチェックする必要があります。これによってホルモン投与の効果を監視・評価するのです。ただしホルモン療法における血液検査は、治療目的の検査の場合でも健康保険が適用されないので注意が必要です。

 投与方法は、注射剤、パッチ剤、経口剤の3種類があります。
日本では注射剤を使用するのが一般的なのですが、これは注射剤が最も副作用が少ないからです。
注射の方法としては筋肉注射を採用することが多いのですが、うまく注射しないと神経に触って激痛が走ったり、注射した箇所にしこりがのこったりします。しかしきちんとコツをつかんだドクターが注射をすれば、このようなことはありません。まったく痛みを感じないだけではなく、注射後の処置を適切に行うことで、しこりも防ぐことができます。

 ホルモン療法の副作用として最も頻繁に見られるのは肝機能障害ですが、その危険性が最も高いのが経口剤です。ホルモン剤をインターネットで注文して服用している方もいらっしゃるようですが、この場合には知らず知らずのうちに肝機能障害に陥ることがあります。これも重要な注意点です。

 それでは実際にホルモン療法を行うと、どのような効果が得られるのでしょうか。
効果を箇条書きにすると、以下のようになります。

A.MFT(女性ホルモン療法)の場合
1.乳房や乳腺が大きくなります。
2.髭や体毛が少なくなります。
3.頭髪が増え、禿の予防になります。
4.筋肉の減少により、丸みをおびた女性的な体型になります。
5.精巣の機能低下に伴い、勃起不全が起こることがあります。

B.FTM(男性ホルモン療法)の場合
1.変声し、声が低くなります。
2.多毛になります。
3.陰核の肥大が起こります。
4.性欲の亢進があります。
5.生理が止まります。
6.筋肉が発達し、男性的な体型になることがあります。

 ホルモン療法の効果には個人差がありますが、通常は開始後数ヶ月で変化が現れます。

 女性ホルモン療法の場合、まず皮下脂肪が増大し、次に体毛や頭髪など皮膚の変化が現れ、精巣の機能が低下していくのが一般的です。これらの効果が現れる前に抑鬱気味になり、イライラしたり鬱状態になることもありますが、治療開始から1ヶ月くらいで抑鬱状態が収まり、効果が現れ始めます。
さらに治療から1年程度が経過すると、乳房の発達が見られるようになります。これらの効果の一部は可逆性のものなので、治療を中断すると元に戻っていきますが、髭や乳房の変化を元に戻すのは困難が伴います。
また精巣の機能低下は、数ヶ月以上投与を続けるとほぼ不可逆となり、元に戻らなくなります。

 男性ホルモン療法の場合は、変声と陰核肥大、性欲の亢進が同時に進み、その後2~3ヶ月経過してから体毛が増加、生理が止まるといった効果が現れます。治療開始から1~2ヶ月程度で中止すれば元に戻りますが、体毛や生理への影響が進むと元に戻すことが難しくなります。また変声が進んでいくと声帯の厚みが増していくため、元に戻せなくなくなります。

 このようにホルモン療法は効果が現れるまでに時間がかかり、投与をやめるタイミングが早ければ元に戻るという特徴があります。そのため身体的性別を変えるという決意が十分でない場合や、身体的性別の変化に伴う社会生活への不安などがある場合に適しています。

 これとは逆に、身体的性別を変えることを決意している方や、早く効果を得たい方には、必ずしも向いていません。そのような方は性別適合手術が適しています。

 次回はこの性別適合手術についてお話しします。

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投稿者 komuro : 16:49 | コメント (0)