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2009年12月22日
品川美容外科の死亡事故について考える
先日「品川美容外科で脂肪吸引後に死亡」という報道がありました。その後も「熊本の品川美容外科でも同様のケース」という続報が報じられています。報道の中には「他にも術後に死亡するケースがあり、危険性が指摘されている」という、脂肪吸引そのものに対して疑問を投げかけるものもあります。そのため脂肪吸引に不安を感じている方も、少なくないのではと思います。
しかし脂肪吸引という施術そのものは、適切に行えば決して危険ではありません。ただしまったくリスクがないわけではない、ということも知っておく必要があります。脂肪吸引を行う美容外科クリニックは数多く存在しますが、この施術は「ドクターを慎重に選ぶ必要がある」施術なのです。
脂肪吸引には複数の施術方法がありますが、代表的な方法が「カニューレ」と呼ばれる器具を使って脂肪を吸い出す「カニューレ法」です。品川美容外科で行われたのもこの方法だと思います。
カニューレとは、先端部分に穴があいている細長い金属製の吸引管のことです。コムロ美容形成クリニックグループでは下の写真のように、オリジナル極細タイプを含め、合計34種類のカニューレを用意し、患者さまの身体に合わせて使い分けています。

カニューレ法では、まず脂肪吸引を行う場所の表皮を小さく切開し、そこからカニューレを挿入し、脂肪を吸い出していきます。このように書くと簡単そうなのですが、実は非常に神経を使う作業です。
例えば腹部の脂肪吸引の場合、皮下脂肪の下には筋膜があり、その下に筋肉と腹膜があります。カニューレは細い管なので、慎重に作業を行わないと、筋膜を傷つけるおそれがあります。そのためカニューレを挿入する時には、できるだけ皮膚と平行になるようにします。角度のついた状態で挿入すると、筋膜に刺さってしまう危険性があるからです。
万一、カニューレが腹膜を突き破ってしまうと、大変なことになります。腹膜に穴があき(これを腹膜穿孔といいます)、腸に傷がつき(腸管損傷)、腸内の内容物が腹腔内に漏出して汎発性腹膜炎を発症するからです。その後、敗血症から腎不全を起こし、2~3日で死亡してしまいます。
品川美容外科がこのケースにあたるかどうかは、まだ捜査結果が発表されていないのでわかりません。しかし施術の2日後に死亡していることや、司法解剖で腸に傷が見つかったことなどから推測すると、汎発性腹膜炎を発症していた可能性が高いと考えられます。
脂肪吸引を行うドクターにとって重要なことは、まず「カニューレで筋膜や腹膜を傷つけない」よう、徹底して注意することです。これは当たり前のことです。しかし注意すべき点はもうひとつあります。万一の場合には即座に必要な処置をとれるよう、術後の経過をきちんとチェックすることです。
汎発性腹膜炎の典型的な症状は、腹膜が傷ついたその日のうちに、腹痛と高熱が出ることです。私のように一般外科出身のドクターにとって、これは基本的な知識です。すぐに診断を下せれば、必要な処置をその場で行うことで、深刻な事態を回避できます。患者さまが死亡することなどあり得ません。
しかし美容外科の経験しかないドクターの場合、汎発性腹膜炎の診断を下せる方は、ほとんどいらっしゃらないと思います。一般外科では様々な症例を見る機会がありますが、美容形成外科専門のみのドクターは自分でミスを犯さない限り、このような症例を見ることはないからです。そのため万一ミスを犯した場合、大変な結果になりやすいといえます。
もし仮に品川美容外科の死亡事故の原因が施術ミスによる反発性腹膜炎だとしても、術後の経過をきちんとチェックし、すぐに適切な処置を行っていれば、死に至ることはなかったはずです。一般外科のドクターがひとりでもいれば可能だったと思います。そう考えると非常に残念なケースだといえます。
最近は低価格で脂肪吸引を行うクリニックも増えているようです。しかし経験豊富で技術力もあるドクターを、美容外科クリニックが低賃金で雇うことはできません。脂肪吸引の料金は、ドクターの経験と技術に支払うコストであり、安ければそれなりのリスクを伴うと考えた方がいいでしょう。
繰り返しになりますが、脂肪吸引はドクターを選ぶ施術です。価格の安さに惑わされることなく、慎重にドクターを選んでください。適切なドクターを選択すれば、決して危険な施術ではありません。でもドクター選びを間違えてしまうと、文字通り「命取り」になる可能性もあるのです。
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投稿者 komuro : 2009年12月22日 11:45