
容外科が標榜科として認められたのは1978年、ほんの30年前のことだ。けれどもさらにその30年以上も前から、美容整形に取り組んできた病院がある。創設70年になる十仁病院だ。日本で最も古い美容整形の病院といわれ、パイオニアとしてつねに美容整形業界をリードしてきた。そんな十仁病院で12年間腕を磨き、5年間副院長も務めた1人の医師が、2008年2月、新しい美容クリニックを誕生させた。
「東京ミッドタウン」に隣接するシエル美容クリニックだ。
白く明るく清潔なクリニックで、小田晴彦院長が目指すのは「正しい診療」だ。患者にしてみたら当たり前のことのように思えるが、「間違った診療」を受けて、行き場を失った患者を多数診てきたからこそ、強く実感していることなのだろう。
しい診療・・・たとえばそれは画像診断。同クリニックでは、最新のデジタルX線画像診断を導入し、鼻や輪郭の整形、脂肪吸引の施術などに取り入れている。骨だけではなく、皮膚や脂肪も鮮明に映し出されるので、現在の状態をより正確に診断することができるのだ。同時に、カウンセリングでも画像を確認しながら治療方針を決めていくため、患者も十分に理解したうえで施術を受けることができる。

「さらに画像診断は、小田院長が力を注いでいる「他院修正」の治療にも役立つ。例えば、他院で鼻の手術をしたけれど思うような形にならなかったといった患者の場合、画像診断をするとプロテーゼが本来の場所に入っていないのがはっきりと診断できるし、どんな治療が施されたのか、ある程度想像がつくのだ。
「満足のいく治療を受けられなかったのに、あきらめてしまっている人が多いというのが現状です。当クリニックでは、そうした行き場のない患者様を積極的に受け入れていきます。ほとんどの場合は、修正できますので安心してください。他院での仕上がりが悪い方ほど、劇的に変わりますよ」

院修正は、通常の手術より 技術や経験が必要だ。十仁病院で5万件を超える手術をしてきた小田院長だから、できることなのである。また、歴史ある病院での経験は、術後の経過をかなり先まで予測することにも生かされている。十仁病院には、40~50年前に美容外科の手術を受けたような人が来院するからだ。
「若い頃に美容整形をしたような年配の方が、多くいらっしゃいました。70歳になっても仕事をしているから、若返りたいとか・・・。だからいま手術をして、40年後にどうなるかというのがわかります。それはできるだけ詳しく患者様に説明するようにしていますね。たとえばシリコンプロテーゼ(人工軟骨)は、20年ほど経つと石灰化していきます。すると透けたり、鼻筋が凸凹したりするので『20年以上経ったら入れ替えるか、抜いてヒアルロン酸に変えるか、対処をしたほうがいいですね』といったことをきちんとお話します。ヒアルロン酸やコラーゲン以外の異物を入れる場合は、どうしても慎重になりますね。たとえ何十年先のことであっても、治療に携わった以上は責任がありますから」
術後のことを考え、アフターケアまで一貫して、ひとりの医師がフォローしていく、というのも小田院長がいう「正しい診療」の1つ。
「手術の翌日、抜糸のタイミング、2週間後、1カ月後というように、その都度医師が確認し、適切な処置を行わなければいけません。そこでしっかり診察していかないと、治るものも治らなくなるのです」
小田院長がアフターケアを重視するのは、患者のメンタル面を考慮してのことでもある。医師が診て自然に腫れがひくことがわかっていても、患者にしてみればつらいし、不安だ。体にメスをいれるのだから、当然のことである。
「医師がしっかりフォローしていくというのは、患者様に安心していただくためでもあります。あまりご自分から話されない方には、こちらから『なにか不安なことはありませんか?』とうかがうようにして、何でも話せるような雰囲気づくりをしています。美容外科の場合はとくに手術した結果、自分に自信が生まれ、精神的にも明るくならないと意味がないですからね」

は小田院長は、かつて専門の診療科を決めるとき、美容外科のほか精神も選択肢に入れていたという。
「美容外科と精神科は、決してかけ離れたものではないんです。美容面の悩みが解決することで、精神的な病気がよくなることもありますから。逆に精神的な病気によって、美容のことを気にしすぎる、ということもあります。体と心は深く結びついていますよね。高校生の頃は、総合的に人間の研究をしたいと思っていたので、心理学や社会学にも興味がありました。ある人にそれを話したら、『それならまず、医学部に行って人間の体の研究をしないと』と言われて、妙に納得してしまったんですね。
ただ、実際に医学部に行ったら、研究よりも臨床のほうが断然おもしろかったので、今に至っているというわけです」
結局心理学などを専門的に学ぶことはなかったが、総合的に人をみることへの興味は、いまも失っていない。その証拠に診療では、患部だけを診るのではなく、患者を総合的に見て洞察しているのだ。
院からまだ間もなく、忙しい毎日だ。休日は体の疲れを癒すことに専念する。もともと絵を描いたり、彫刻を彫ったり手先を動かすのが好きだったが、その欲求はいま、手術や鼻に挿入するシリコンを自ら作ることで満たされている。

「シリコンは1つ作るのに2~3日くらいかかります。一人ひとりの鼻骨に合わせて数ミリ単位で、彫刻を仕上げるように彫っていきます。こういう作業が好きなんですよ(笑)。ひとりの患者様に対して、高さを変えて2~3個は用意しておきますね。お見せするとびっくりされます」
カウンセリングからアフターケアまで徹底的に患者と向き合い、それ以外の時間も手術の準備のために費やす。患者をひとりの人間として総合的にみているから、できることなのだろう。過去に美容整形で苦い経験をしたことがある人ほど、小田院長の誠実さを実感できるのかもしれない。

